1.発表日時:2006年 11月6日(月)15:30〜16:30
2.発表場所:理学部7号館2階202会議室
3.発表タイトル:「世界最高速のスーパーコンピュータ用プロセッサチップ開発に成功 − ペタフロップス実現へ大きな一歩 −」
4.発表者:平木 敬 東京大学情報理工学系研究科・教授
牧野淳一郎 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト・プロジェクト長/理論研究部・教授
5.発表概要:
東京大学が中核機関として実施中の科学技術振興調整費「分散共有型研究データ利用基盤の整備」プロジェクトでは、2ペタフロップスの計算速度を持つスーパーコンピュータ、GRAPE-DRを開発中です。今回、GRAPE-DRの中核である512Gflopsのプロセッサチップとシステムソフトウェアの開発に成功しましたので発表します。
6.発表内容:
東京大学が中核機関として実施中の科学技術振興調整費「分散共有型研究データ利用基盤の整備」プロジェクトでは、2ペタフロップスの計算速度を持つスーパーコンピュータ、GRAPE-DRを開発中です。このほど、GRAPE-DRの中核であるプロセッサチップの開発に成功し、1プロセッサモデルの動作が開始しました。現在、予定した速度でのプロセッサ動作、GRAPE-DR用C言語コンパイラ、数種類のアプリケーションプログラムが動作しています。
プロセッサは一つのシリコンチップに512個の要素プロセッサを集積し、1チップで512ギガフロップスの計算速度を実現します。512ギガフロップスの計算速度は1チップでの計算速度で世界最高速です(注1)。今回の開発成功により、ペタフロップスを越す性能を持つ汎用スーパーコンピュータ開発が大きく進展しました。
今後、2008年度までに2ペタフロップスの演算速度を持つ超並列計算システムを構築する計画です(注2)。
開発したSINGチップは汎用性をもち、約80個用いることで、線形方程式、天体シミュレーション、分子動力学計算やナノテクノロジーのシミュレーションにおいて地球シミュレータを上回る速度をラック1本の大きさ、20KW以下の消費電力、約5000万円のコストで実現することが期待されます。
7.発表雑誌:
2006年11月13日(現地)から米国フロリダ州タンパ市で開催される、スーパーコンピューティング国際会議において、GRAPE-DRプロセッサチップが公開されます。
8.注意事項:
米国では11月13日(現地)に公表する予定です。
記事掲載については、11月6日(火)16:30以降(記者会見終了後)に
お願いします。
9.問い合わせ先:
東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻 教授
平木 敬 e-mail: hiraki@is.s.u-tokyo.ac.jp
電話:090-6482-9169
国立天文台天文シミュレーションプロジェクト・プロジェクト長/理論研究部・教授
牧野淳一郎 e-mail: makino@astron.s.u-tokyo.ac.jp
10.用語解説:
ペタフロップス
1秒間に100兆回(10の15乗回)演算する計算速度。現在、世界各国がペタフロップスを超える計算速度のスーパーコンピュータ開発を競っている。また、2010年から2011年には10ペタフロップスを超えるスーパーコンピュータの登場が期待されている。
ギガフロップス
1秒間に10億回(10の9乗回)演算する計算速度。
SIMDアーキテクチャ
並列計算機の構成法の一つ。並列に並べられた要素プロセッサ全てが同一の演算を行うことにより、高速化を実現する方法。ベクトル計算機、多くのグラフィックスプロセッサはSIMDアーキテクチャを用いている。これまでに作られた主なSIMDアーキテクチャの計算機は、米国のILLIAC W、Cray-1、Connection Machine CM-1、 日本のSXシリーズ、VPPシリーズ、S-810/820 などである。